愛知県半田市 「新美南吉生家、秋葉社」

 2021/9/24、久し振りの知多四国巡礼と見頃の過ぎた?曼殊沙華の群落を写真に収める目的でこの地を訪れました。

札所巡りも光照寺で一区切り、次の目的地矢勝川に向け光照寺から西に向かい、阿久比川を越え県道264号線をひたすら北上します。
やがて歩道脇に「南吉童話の径」の看板があり、そこから細い路地が左に伸びています。
光照寺から概ね40分程。

今回はこの通りに残る南吉生家とその前に鎮座する秋葉神社を取り上げます。
この周辺には南吉生家の他、所縁のある寺社が集まっていて、その先は彼岸花で知られる矢勝川に続きます、なかなかスイ〃とは進めない。

この辺りの通りの細い道筋は亀崎から半島西側の大野を結んでいた大野街道。
写真は県道から大野街道に入ったすぐ右にあるのが「新美南吉生家」
街道沿いには簓子塀の建物はところどころに点在しています。

切妻、瓦葺で簓子壁のレトロな建物。
ここが童話「ごんぎつね」などの作者新美南吉の生家。
本名は新美正八、1913年(大正2)に父渡辺多蔵、母りゑの次男としてここで生まれました。
正八を生んだ4年後母親は他界し、その2年後父親が再婚、継母志んとの間に異母兄弟が生まれた。
街道沿いから見る生家は平屋の様に見えますが奥は二層構造で北垂れの斜面を利用した造り。
街道側の右の間口が父親が営んでいた畳屋、左が志んの営んでいた下駄屋と生活必需品をターゲットにした多角経営をしていたようだ。
やがて母りゑの実家の跡継ぎが不在のため正八は新美家に養子に出されることになったが、当時は跡継ぎとなる長男の養子縁組は禁止されていた時代だった。
りゑの実家の跡継ぎ問題を解決するため取られた大人の都合は、幼い正八にとって衝撃的なものだったに違いない。正八八歳の時だと云う。
新美家を継いだ正八は、1932年この地を題材にした代表作「ごん狐」を世に送り出す事になる。

イベントで何度か生家の内部を見学する機会があったが、自分の幼い頃に見た事のある懐かしい展示品が置かれていたのを覚えています。
この生家は後に償却され一時人手に渡っていたそうで、地元の生んだ著名な作家の生家を保存するため市が買い戻し、復元されたものという。
入場は無料ですが内部の見学は建物左に掲示された連絡先に確認が必要。

生家の左には「新美南吉生い立ちの地」の石標が建ち、ここと写真の県道265号線沿いに建つ「新美南吉資料館」や「童話の森」など童話の舞台となった一帯の観光の中心になっている。

新美南吉生家の西側で道は二手に別れ、その角に秋葉三尺坊が祀られていました。
先を急ぎスルーしようとしたが、通りすがりに常夜灯の元号を見て参拝する事にした。

お洒落な住宅街の片隅に玉垣に囲まれ、社地が与えられている。
玉垣も社も綺麗なため戦後の街角に祀られた火伏の神、・・・と思っていた。
右手の常夜灯には大きく「文化五年」と刻まれていた。

当時とまではいかないけれど、明治中頃の当地の地図が上。
残念ながら鳥居の印は掲載されていないけれど、当時の岩滑集落東端に位置し周囲は水田が広がっていた。社は集落入口に鎮座している事が分かる。
今では引いた写真も撮りにくい程お洒落な家が立ち並んでいる。
矢勝川両岸は今も当時の面影が残るが、堤から少し離れた地域の移り変わりは驚くほど。
ごん狐の舞台となったこの地も姿を変えようとしている。

常夜灯左手の小さな解説板には秋葉社の由緒が語られていた。
火伏の神秋葉三尺坊権現を信仰する秋葉講の信者により1808年(文化5)に建立した常夜灯。
今から二世紀前の先人たちの思いから勧請されたもの。
現在は電球ですが1955年(昭和30)頃までは講中の家々が交代で灯明を灯していたという。

石段は岩滑の子供に達がヨモギの葉を潰し団子にする「草つき遊び」などの場だったようだ。
新美南吉の小説にも登場するらしく、幼い頃の正八もこの常夜灯は遊びの場だったようだ。
正八が八歳の時、ここで遊んでいると継母志んに呼ばれ、そのまま隣村の母の実家新美家に養子に出されたという。
自分自身も幼い頃に両親の離婚、再婚を経験しているだけに、八歳の正八の心情は察するに余りある。
29歳の若さで他界した新美南吉、幼い頃の遊び場となった舞台の一つが今も生家の傍に残っている。

秋葉社の二股を左に進むと直ぐに八幡社の社頭、その前の路面に案内プレートがある。
目的地は矢勝川、進路は八幡社を経て写真の常福院方向に向かう事にした。

2021/9/24
新美南吉生家
所在地 / ​半田市岩滑中町1-83

秋葉社
創建 / 不明
常夜灯 / 1808年(文化5)
祭神 / 秋葉三尺坊権現
所在地 / 半田市岩滑中町2(新美南吉生家の斜め向かい)

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