阿波国一宮大麻比古神社
徳島県鳴門市大麻町
南に四国山地と北に讃岐山脈に挟まれ、東西に長い徳島県、その間を吉野川がもたらした徳島平野が広がります。
阿波国一宮大麻比古神社が鎮座する大麻町は旧吉野川の左岸に注ぐ坂東谷川沿いにあたります。
吉野川は古くから氾濫を繰り返す暴れ川で知られ、名西群石井町で別宮川と分流し紀伊水道に注ぎます。
この別宮川を1672年(寛文12)治水や新田開発を目的に開削、蛇行していた吉野川の流れを主に別宮川へ導いた事から、やがて別宮川を吉野川、もともとの吉野川は旧吉野川に改称されました。
高松自動車道の板野ICから県道12号線、県道41号線を経由、ICから15分程走ると大麻比古神社の大鳥居に到着です。右に社号標と小さな石鳥居があります。
朱塗りの大きな鳥居は2002年に再建された鋼管製のもので、高さは14.6㍍と巨大なもの。
鳥居から先の参道には灯篭と並木が延々と続きます。
灯篭は主に2004~2005年にかけて氏子崇敬者により寄進されたものという。
両側の楠木の並木、以前は樹齢を重ねた黒松並木が続いていたそうです、それも害虫により枯死し、その後に楠木が植えられ現在の並木を作っています。
鳥居扁額
大鳥居の右側の小さな鳥居は「天神社」
鳥居を過ぎ左右に参道が分かれ、左手に大麻比古神社末社「天神社」が鎮座。
手前左に石の社が見えます。
「五神名地神塔」
右に社号標らしき五角柱の石標と手前に祭壇の様な岩がある。
石標には大己貴命、少彦名命、天照大神、倉稲魂命、埴安媛命と農業を守護する神々の名が刻まれています。「五神名地神塔」と呼ばれ、地元では親しみを込め「地神さま」として呼ばれるそうです。
ここ徳島の村々にはこうした塔は多くみられるそうです。
境内左の天神社へ
上の写真の石の社は大麻比古神社の末社「野神社」
農業の神、鹿江比賣命を祀る。
下
大麻比古神社末社の「天神社」拝所全景
学問の神、菅原道真を祀る。
解説板には大麻比古神社の神紋の麻紋が付けられています。
本殿全景
社頭を守護する狛犬
駐車場は?、それどころか社殿すら見通せない。
大きな狛犬、垂れ耳で玉を咥えた均整の取れた面々。
上
参道脇の光景、緑の中に名も知らぬ白い花が咲き誇っていました。
路肩に一旦車を止め、かみさんを残し社頭を収めてきましたが、再び駐車場に向け再出発。
下
標高538㍍の大麻山は大麻比古神社の御神体でもあり、7合目から頂上にかけては伐採される事はなかった。
そのためこの地の植生がそのまま残るそうです。
麓から頂上までは2時間程の工程で、石段と坂道が続く修業の場であり、低山登山の足慣らしとして訪れる人は多いようです。
大鳥居から真っすぐに伸びていた参道、一旦左に折れて再び真っすぐに続いています。
やがて正面に赤い欄干の橋が見えてきます。
橋の左手に大きな参拝駐車場があり、ここに駐車しここからは徒歩です。
旧吉野川の支流で坂東谷川に架かる祓川橋、ここを渡り左の杜に向かいます。
橋を渡るとニノ鳥居と正面に石段が現れる。
その先に巨大な御神木が聳えています。
石段手前の狛犬
彫の深い彼らの足元は子や玉ではなさそう。
吽形の前足の下に老人がタバコでもふかしているような光景が彫られています。
社名に大麻、神紋は麻まさかとは思うが、それが何か写真からは分からない。
なんだろう?
一段上がった右に手水舎・手水鉢。
中央の盃?に星形の麻紋が施されています。
御神木の楠木
樹齢千年を超えると云われ鳴門市指定天然記念物、その高さは22㍍、直径は8㍍を超える。
まさに御神木の相応しいもので、そこには何か不思議なものが潜んでいそうな雰囲気が漂う。
境内左手に社務所と裏手に「水神社」、右手に古神札納所。
水神社は帰りに参拝と決めていたが、すっかり忘れていた事に今頃気づく。
注連縄鳥居の先に社殿が広がります。
正面の拝殿と右に祈祷受付左に授与所。
入母屋銅葺屋根の平入の拝殿は庇に唐破風と千鳥破風が施されたもので、1970年(昭和45)に再建されたものだという。
祭神は大麻比古大神と猿田彦大神を祀ります。
創建は不明。
927年に出来上がったとされる延喜式神名帳の中で、阿波国50座の内の大社として大麻比古神社の名が記されていることから、1100年前には既に阿波國を代表する神社であったようです。
拝殿前の狛犬
境内では一番古いと云われ1762年(宝暦12)のもの。阿形(右)吽形共に個性的なフォルム。
ヘルメットでも被ったような頭部、吽形は角付きで全体的に細かな彫はされていない。
小さいながらニヤケタ表情が印象的です。
拝殿右から神庫(下の写真)を見ながら本殿方向に向かいます。
上
本殿後方から拝殿の眺め、本殿は流造の様です。
現在の本殿は
1880年(明治13)に建て替えられたようです。
下
本殿後方の拝所。
上
末者「豊受社」、祭神は豊受大神。
下
「豊受社」の右にある小さな石の社。詳細は分かりません。
手前は一部が欠損しはっきりしないけれど狛犬の様に見える。
「山神社」
上
豊受社の左に鎮座し、その名が示すように山を司る神、大山祇神を祀る。
下
「中宮社」
祭神は不明のようですが、神宮式年遷宮古材を再利用し1974年(昭和49)に建替されたもの。
この辺りにやたらと「危険 猿出没注意」の看板が建っています。
中宮社から右手に進むと「奥宮遥拝所」がある。
大麻山山頂の奥宮峯神社に登ることなく参拝できる。
今回は時間の制約がありここで参拝としよう。
「心眼の鏡池」とそこに架かる眼鏡橋。
約75年前の当時この辺りには第一次世界大戦で捕虜となったドイツ兵の収容所があり、捕虜達は故郷を思い、ここに池を掘りこの眼鏡橋を架けたのが始まりだそうです。
この池から近くの谷筋にはドイツ橋も架けられた。
この近くにはドイツ館もあり、ドイツと日本の友好の懸け橋ともなっているようです。
「ドイツ橋」
6~9年の長い捕虜生活の中で彼らは地元に乳製品の製法や土木技術等のドイツ文化を残していったそうで、このドイツ橋は帰国を前に記念として彼らが残していったもの。
アーチ状に組まれた石組は美しいものがあるけれど、現在は通行が規制されていました。
橋の先に見える赤い鳥居は、そこから石段を上ると丸山神社と丸山稲荷に続きます
上
鳥居の左の石の社は「鳴門神海五国龍王神」
下
丸山神社と丸山稲荷はこの石段を少し登った尾根に祀られています。
尾根に出て左が「丸山稲荷社」
祭神は商売繁盛の神、倉稲魂命を祀る。
稲荷社から右に石鳥居があり、その先が「丸山社」
ここを守護する狛犬達。
丸山社覆殿全景と社。
祭神は丸山神。
本殿西側から駐車場に戻ります。
阿波国を開拓し麻布や木綿産業の礎を築いた阿波の忌部氏、その祖神である天日鷲命の御子神を祀り、1000年の樹齢を誇る大楠を育み、おふわさんと親しまれている大麻比古神社は徳島の総鎮守としての風格を備えた神社、そんな印象を受けました。
阿波國一ノ宮 『大麻比古神社』
創建 / 不明
祭神 / 大麻比古大神と猿田彦大神
本殿 / 流造
末社
天神社 祭神 / 菅原道真
野神社 祭神 / 鹿江比賣命
豊受社 祭神 / 豊受大神
山神社 祭神 / 大山祇神
中宮社 祭神 / 不明
丸山稲荷社 祭神 / 倉稲魂命
丸山社 祭神 / 不明
未参拝
水神社 祭神 / 水波女神
西宮社 祭神 / 天照大神
住所 / 徳島県鳴門市大麻町板東字広塚13
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御朱印
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